オリエント考古美術
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中央アジアの美術



菩薩図
出土地: キジル洞窟
年代: 5〜6世紀
材質: 壁画
寸法: 高さ 19 cm、幅 14 cm
1913-14年ファン・ル・コック探検隊による出土品

タクラマカン砂漠を挟むシルクロードの北道と南道沿にそれぞれの仏教の信仰中心地が発見されました。北道にはキジル洞窟やクチャ周辺の寺院の遺跡が有名で、南道にはダンダンウイリクやハダリック遺跡などを含むホータン周辺に仏教寺院の跡が代表的です。寺院の壁が仏教関連の壁画に飾られていました。その様子をオーレル・スタイン氏やアルベルト・ファン・ル・コック氏や大谷光瑞氏の探検隊が残した発掘レポートから伺えます。
東西文明を結んでいたシルクロードの途中に位置したソグディアナ(中央アジア、サマルカンドを含むザラフシャン川流域)は、紀元5世紀から貿易の中心となりました。国自体も農業や町作りが最盛期を迎え、ソグド人は頻繁にシルクロードを往来するようになりました。美術も栄え、ソグド人の伝説や宮廷の宴会などを物語るペンジケント(タジキスタン)の壁画が描かれたのはその頃でした。シルクロードを往来していた人々も彼らの日用品も作家のインスピレーションでした。中国で「胡」と称されたソグド人は、美術において尖った帽子をかぶった口髭と顎鬚の濃く鼻の高いイメージが固定しました。胡人と駱駝を表す加彩粘土の塑像や織物、旅人が使っていた皮袋を模した陶器などがシルクロードへの憧れを反映しています。
6世紀から8世紀にかけてソグディアナはいくつかの強力な侵略者の支配下になりながらも独自の文化を失うことなく、むしろソグド人の作り出した作品から彼らの美意識が中央アジアで広まったといわれています。6世紀前半にフン族に征服されたましが、フン族が持ち込んだ多量の銀はかえって経済的な成長につながり、ソグド人の商業の地域も広まったそうです。6世紀の後半からトルコ人が流れ込み、7世紀の後半に中国からも侵略を受けました。8世紀前半から中央アジアで始まったアラブの侵攻にも係わらずソグディアナは独特の文化を保ち抜き、イスラム化は8世紀の後半に入ってから始まりました。
シルクロードの名は中国から西へ運ばれていた絹に由来します。中国の「史記」によれば、紀元前2世紀に長距離の貿易を促したのは、中国が遊牧民の攻撃を止めるため味方を作ろうと思い絹の贈り物を派遣団に持たせた事でした。西へ領土を広げた中国は侵略軍の給料などを絹で支払っていたため多量の絹が流れました。絹に対する強い憧れのため、中国製以外にも絹の織物が作られるようになりました。最も有名なのはササン朝ペルシャとソグディアナの生地です。ササン朝の織物のデザインは幾何学文様や植物と動物のモティーフの組み合わせでした。ササンとソグドのデザインといえば、連珠文が代表的です。直線と円形に並べられたドットの連珠文やハートの組み合わせからなるローゼット、四葉、菱形などの模様が王冠や装身具の飾りに由来すると言われています。鳥のモティーフは鴨、孔雀、鶏、鷲などで、動物は鹿、猪や有翼の羊と馬と空想動物のセンムルヴなどです。
絹の織物、6世紀
デザインに用いられた殆どの動物はイランの伝説に登場し、別々に考えられないほど密接だった宗教と王権を象徴する存在でした。但し、ササン朝の伝統の影響受けたソグドでは、織物や器などのデザインに連珠文と空想動物などを用いても、同じ図像が斬新で躍動感あふれるデザインに生まれ変わりました。
かつてソグディアナと文化的一体を成していたアフガニスタンの北部から8世紀頃のものと思われる素焼きの壷が出土しており、その形やデザインは豊かな想像力に基づいたものです。形は多様で、器全体が鳥や民族衣装を纏った男性をかたどるものもあれば、胴体は一般の壷で注ぎ口は動物や鳥や人間の頭部をかたどるものも、全く普通の壷の形をしたものもあります。壷の胴体に描かれた動物は様式化されており、その首から靡くリボンはパルティア時代(紀元前250年頃〜紀元224年)から拝火教の神々から王権を授かる王のイメージで王冠についていたリボンに由来していると思われます。右下の写真の壷のように胴体が大胆に形成され、流麗な曲線で描かれた幾何学文様が装飾性を極めるものもあります。この壷類の装飾には連珠文が使われています。
ソグド人は連珠文をふんだんに使って広く普及させたと思われています。織物と同様に連なる真珠は円形や直線でソグディアナのペンジケントの壁画や土器や骨壷などの模様を区切ったり、装飾として用いられたりします。


リュートン 鹿

ソグド文化、土器、紀元6〜8世紀、高さ:22.5 cm

ソグド文化、土器、紀元6〜8世紀、高さ:15.5 cm

オルドス、紀元前3〜2世紀
青銅、高さ:6 cm、長さ:9 cm


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